月刊ドライブイン vol.10
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取材・撮影・文・発行人:橋本倫史 / A5判 / 48P / ソフトカバー(ペーパーバック) / 2018年4月発行
戦後のモータリゼーションから生まれた風景として日本に定着し、平成から令和へと時代が移りゆく中で徐々にその姿が消えつつあるドライブイン。全国各地に残るドライブインを訪ねながら、店主へのインタビューやお店の歴史、食事メニューなどを通して「昭和」の風景や記憶を伝える、著者渾身のルポルタージュ。毎号二編ずつ掲載(vol.12の最終号のみ一編)したシリーズ。
【目次】
「千日道路の今 奈良・山添ドライブイン」
「一本列島の夢 児島・ラ・レインボー」
【内容】
一つ目に取り上げるのは、
奈良県にある「山添ドライブイン」です。
弊誌はこれまで、北海道から沖縄まで全国各地のドライブインを取り上げてきました。そこで唯一取り上げてこなかったのが関西のドライブインです。
名古屋と大阪を結ぶ道路はいくつか存在します。その一つは国道一号線です。旧東海道を踏襲した国道一号線は、京都を経由し、国道二号線に名前を変えて大阪へと続きます。そこにはかつて無数のドライブインがあったはずですが、現在ではほとんどドライブインを見かけることはありません。
名古屋と大阪を結ぶ道路には、名阪国道もあります。これは奈良を経由するルートで、名阪国道は無料の自動車専用道路です。この道路が開通したのは1965年のことですが、わずか千日で完成したことから「千日道路」とも呼ばれています。この千日道路沿いにはいくつかのドライブインが残っており、その一つが「山添ドライブイン」です。
1964年創業の「山添ドライブイン」は、オープン当時の面影を残したまま営業を続けています。それは外観や内装だけでなく、そこに流れる時間も、どこか時間の流れが止まっているようです。お店を営むご夫婦に話を聞きつつ、「山添ドライブイン」の風景を書き記します。
二つ目に取り上げるのは、
岡山県にかつて存在した「ラ・レインボー」です。
今年の春、瀬戸大橋は開通30周年を迎えました。瀬戸大橋が開通した1988年、岡山は沸き立っていましたが、何より盛り上がりを見せていたのは、橋のふもとにある児島という地域です。瀬戸大橋の開通にあわせてJR児島駅が開業し、駅前では瀬戸大橋架橋記念博覧会’88おかやまが開催されました。橋の建設中から児島には多くの観光客が押し寄せ、リゾートホテルも建設されてゆきます。
そうした瀬戸大橋ブームの中で、総工費50億円を投じたドライブインがオープンします。高さ138メートルを誇る回転式展望台をそなえた「ラ・レインボー」です。
1990年に華々しくオープンした「ラ・レインボー」ですが、瀬戸大橋の交通量は予想を下回り、さらにはバブル崩壊の煽りも受け、わずか7年で閉鎖されました。ただ、建物は現在もそこに残っており、窓ガラスは割られ、落書きだらけの廃墟として佇んでいます。
最初に「ラ・レインボー」に興味を持ったのは今から7年前のことです。20年前に閉店してしまったドライブインに、一体どんな時間が流れていたのか? その疑問を探る旅の記録です。