風をこぐ To Row the Wind
¥3,520
SOLD OUT
著者:橋本貴雄 / 出版社:モ・クシュラ / A5判 (146mm×195mm×26mm) / 342P / ソフトカバー / 2021年 9月発行
写真を始めたのは、福岡の家でリハビリを続けていたフウが、少しずつ歩き始めた頃だった。
フウを撮っているとき、その写真で作品づくりをするつもりはなかった。
ただ、フウが歩いて行くほうへ歩いていき、流されるように、そこに現れてくるものを撮った。
12年間、私はフウのそばにいて、ただ見つめていたように写真が残った。
『風をこぐ』(あとがきより)
2005 年、車に轢かれ、路上で倒れていた一匹の野良犬。フォトグラファーの橋本貴雄さんはその犬を保 護し、フウと名付けて引き取りました。事故により脊髄を損傷したフウは、後ろ脚に障害が残り通常の歩行ができませんでしたが、それでも毎日の散歩をとても楽しみました(最後の2年3ヶ月は車 イスを使用)。『風をこぐ』は、12 年間のフウの記録をまとめて一冊の写真集にしたもので、地元福岡でフウを保護した 2005 年から、大阪、東京、そし て移住先ベルリンで亡くなる 2019 年まで、移りゆく季節・時間のなかで散歩を するフウの姿を写した 261 点の写真と、本写真集を出版するにあたって書き下ろされた2 万文字のエッセイが収録されています。印象的なタイトルは、バタバタとうねるように前足で漕ぐ ように歩くフウの姿から、橋本さんが付けました。フウのあとを追うように、ページをめくっていくと、生きとし生けるものへの慈愛の感情が湧いてきてたまらない思いに駆られる一冊です。
*橋本貴雄(はしもと・たかお)
1980年 熊本県生まれ。2008年、ビジュアルアーツ大阪写真学科卒業。同年上京し、イイノメディアプロにて勤務したのち 2011 年ドイツに渡る。現在、ベルリン在住。「風をこぐ」所収の写真からなる「Kette」で2021年度「キヤノン 写真新世紀」佳作(椹木野衣氏選)。