使えないスプーン|竹俣勇壱
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著者:竹俣勇壱 , 編集+発行:櫛田 理 , デザイン:山口信博+玉井一平 , 写真:鈴木静華 / 発行:FRAGILE BOOKS / B5変型判 / 224P / ソフトカバー・コデックス装(スリーブケース入り) / 日英対訳 / 2025年 6月初版発行(限定:2,000部)
ここに一本のスプーンがある。
700年前に使われていたスプーンで、オランダの川底から発掘されたらしい。美術的な価値はほとんどないし、実用の役目もずいぶん前に終えている。このような錆びれて、朽ち果て、もう使えないスプーンやナイフがぼくの手元にはたくさんある。もともとは、つくり方を知るための資料だった。
──竹俣勇壱
オランダの川底から発掘された一本のスプーン。
錆びれて朽ち果てていてどうしようもない。
700年前に使われていたそれには美術的な価値も見られないし、実用の役目もとうの昔に終えてしまっている。彫金師としてオーダージュエリーを手掛けながら、生活道具の制作にも取り組んでいる竹俣勇壱さんの手元には、つくり方を知るための資料としてこのような使えなくなってしまったスプーンやナイフがたくさんあるそうだ 。
そして、工芸研究家の辰澤速夫さんが20年以上前に上梓した『カトラリーの宇宙』。その本には「古道具坂田」の坂田和實が長年に渡り欧州で買い集めた中世のカトラリーが掲載され、鈍い色にもかかわらずある種の輝きを放っていた。
本書は、『カトラリーの宇宙』へのリスペクトとして編まれたもので、件の辰澤コレクションを引き継ぎ、著者の収集品を加えた74点を原寸大で収録した一冊。掲載品の合間には、カトラリーが登場する絵画や、伊丹十三に太宰治、ジャック・プレヴェールらによる文章が添えられていて、これがまた楽しいし、巻末には各カトラリーの詳細な解説も──。
錆びに傷、経年変化を纏った色合いに美しいディテールは、まさに小宇宙といった感じで、もうずっと眺めていられることうけあい。